(約 3,700文字の記事です。)
手動リトポで最も大変なのは、トポロジ密度の違うメッシュをつなぐ「つなぎ目」だ。例えば指と手の平との間、水かき部分の結合だ。顔パーツについては至る所が高密度であるが、頬周りやおでこ周りは低密度で十分と、粗密が激しい部分ほど手動でトポロジを作る必要がある。ハッキリ言って面倒だ(笑)
だが、考えてみて欲しい。人体に関してはほぼ正解といえるようなトポロジのポリ割りが既に先人によって作り上げられている。車輪の再発明をする必要はないと思っている。
人体の優れたトポロジは「既に存在する」
具体的にこれ!とは言わないが、有料無料含めると、かなりの数が利用可能だ。例えばMMDキャラクターを分析してみよう。可動するためのポリ割りで、しかも指先までボーン&ウェイトが乗っている。Blenderで眺めることができる。商用利用可能なモデルも当然ある。それらは口パクもできるし目も動くので顔のトポロジを学ぶには最適だろう。おまけにつま先から指先までリグ入りでポージングもできる。
そして商用利用可能でリリースされているモデルを使うならば、それを使えば、人体の素体についてはもうリトポの必要はないのではないか?
ただMMD系だとどうしてもアニメ顔だが、英語圏を眺めればMake Humanなどもあり、リアルな頭部の完成済みトポロジメッシュもまたたくさん世に出ている。ArtStationでも見つけることができる。
人体のポリ割りは枯れきっている?
人体のリトポについては、もう枯れきっていると言っていいだろう。一部の関節や口周りなど、業界の用途に応じて作法が違う程度だ。なので試行錯誤から入ることは無駄な気がする。既にある完成型から答えを持ってくるか、そもそも答えから変形させてオリジナルにすれば、最小限のエネルギーでベースメッシュは完成だ(商用利用可能モデルに限るが)。後はサブディビジョンレベルを上げて彫り込んでいけばいい。そこからは業界ごとに異なるワークフローになるだろうが、完成した優れたトポロジからいじると、作業がはかどることは間違いない。
スタイライズドなヘアーメッシュもパターンが決まっている
スカルプトで彫り込むタイプは割愛して、そうでないバナナタイプの毛束の配置ならば、それももう完成型がある。直線メッシュにリグを入れて、リグ変形で毛束を配置すれば太さ・長さを可逆に変更できるので修正が容易だ。Zbrushのカーブブラシにこだわる必要はない。特にロン毛での制御の可逆性は強力だ。
この場合も毛束のトポロジは既に完成しているのでいじる必要はない。毛の長さによっては手動でループエッジ&ボーンの追加&自動ウェイトで済む。細さもボーンの径方向の縮小で表現できるから可逆だ。
実は衣類作りにこそリトポ技術が生きる?
そう考えると、ワンオフで、毎回作る必要があって、形状のバリエーション豊かなものとしては、キャラクターの衣類だろう。実はこれの作成にリトポ技術がフル活用できる可能性がある。靴は割とテンプレ的な作り方で流用できるとしても、例えば手袋となると、個性が際立つ。他、ふわっとした上着、スカート、スカーフやマフラーとなると、トポロジが整っていると作りやすい部分がたくさんある。特に綺麗なループエッジの存在は強力だ。
だがZRemesherなどの自動リトポでは、場合によってどうやってもねじれループが取れず、もどかしいときもある。そんな時にローポリで手動リポとしてからZbrushに戻せば、サクッと次に進める。イライラしなくていい。服だから、場合によっては斜めのシワが重要になる場合には、シワに合わせた斜めのトポロジが必要になる。水平垂直の輪切りのエッジループとは対極にあるが、そういうことを自動リトポでは満足に作れないことが多かった。(毎回、惜しいところまでは行くけれど、そもそもミドルポリ過ぎたり、ローポリにしたら螺旋ループになったり、欲しいところにエッジが来なかったりと、やっぱりイマイチだった。)
サブスタンスペインターでテクスチャを作りたいので
こうなれば、自動でも手動でも、リトポしてある程度ローポリに持って行ける方が色々と都合がいい。最終的にハイポリメッシュをハイトマップにベイクするにしても、基本となるローポリがなければ話にならない。
どうやっても、手動リトポで自分にとって都合のいいローポリメッシュを作り出せる方が、有利なんだよね。デメリットがない。おまけにBlender使いならばRetopoFlowという便利なリトポツールが使える。基本的には有料だが開発者公認の方法で(今ならば)無料でフル機能が使える。
リトポ自体は手段に過ぎない。完成型にメッシュが見えないならばなおさらだ。なので、なるべくならば触れずに済ませられるのならばそれが一番だ。だが触れることで効率化できるならばリトポした方がいい。
で、既存の完成されたトポロジを利用できるならば、最初からそれでスタートすれば、リトポする必要がない。未来からワープして戻ってきての「形状に一致するトポロジ」があるわけだから、そこからスタートすれば当然しっくりくる。そこから外れる大きな形状変更があった場合には、そこだけ部分リトポすれば済む話だ。全体リトポする必要はない。
枯れた完成しているトポロジを最初から利用する
つまり、人体のような既に完成している決まり切ったトポロジに基づく造形の場合には、最初から完成されたトポロジから造形を開始すれば二度手間を防げる上に、早くて効率的に作業を進められると思うのだ。そして後工程にもスムーズに進める。直すにしても一部分だけで済む。いまさら肘膝の裏側のトポロジについてノウハウを考える必要はないと思う。完成型のそれを流用すれば大抵はズレない。
それは実力では無いと言う人もいるかも知れないけれど、完成した技術を流用しないのは、それは無駄だと思う。
あなたは徒歩で東京に行きますか?あるいはカゴ?だって、江戸時代には皆そうしていたんだよ?
自動車、鉄道、飛行機、色んな文明の利器がある。完成されていて安全確実に利用できて「東京に着く」という結果を手に入れられる。それがトポロジになっても同じ話だ。既に完成された技術を流用しない方がおかしい。
なので、手動リトポができるようになっても、なるべくリトポしないで済ます方法は常に考えておきたい。
デジタルは「コピー、ペースト、使い回し、プログラムによる自動化」がアナログとの決定的な違いなので、そこを磨き上げることで更に効率を上げられる。ツールや手段を手に入れたら、それを使うことを考えるべきだが、ツールや手段に振り回されて目的を見失っては本末転倒だと思うのだ。
ただし「良いトポロジの学習」は無駄ではない
目的意識の違いだ。効率よく作るだけならば既存トポロジの流用でいい。だが口や膝肘脇の下という可動部の「トポロジ作りそのものを学ぶ」つもりならば、学んでリトポを実践して納得する価値はある。学習目的と実践目的とでは、アプローチ方法が異なる。ここはごちゃ混ぜにしてはいけない。
入試で三平方の定理から記述していては時間切れになるのと一緒w だが、数学という学問を学ぶには深く掘り下げることは大いに意味がある。
トポロジのポリ割りにしてもそうだ。どこまで深入りするかは各自の自由。
今回の創作活動は約1時間30分(累積 約2,214時間)
(682回目のブログ更新)
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