(約 4,400文字の記事です。)
「完成データ付:CGキャラクター制作の秘訣」(著:江原 徹)を読む機会があったので簡単にレビューしてみます。ただし私は江原氏のような超絶凄い3DCGモデルを作る仕事をしているわけでは無いので(笑)あくまでも3DCG学習者が江原氏のような凄いモデルの製作ワークフローをなぞることで何が身に付くのか?という視点でレビューしてみたいと思います。
ほとんど「3DCG初心者がこの本を読んだときにどう感じるか?」というレビューになるかと思います。あまり専門的な指摘はできなさそうです。。。
対象読者はリアル系3DCGキャラクター作りに興味のある人。
本の概要
表紙の女性キャラクターをゼロから作るワークフローが書かれている。
3DCGの本ではお馴染みのフルカラー印刷。208ページだが、厚さは実測値で1.4cmと、チュートリアル本としてはかなり薄め。(先日レビューしたウチヤマ氏のZbrushチュートリアル本は2.7cmなので、厚さはほぼ半分なので、チュートリアル本としては「内容の密度に不安」を感じた。
ただ、結論を言えばこの本はチュートリアル本ではなかった。どちらかというと「ワークフロー紹介本」+ヒント集だった。なので手順を事細かに書いていない分だけ、薄く仕上がったという印象。
初心者向けではない。むしろ中上級者向け
Maya, Zbrush, Photoshop, サブスタンス3Dペインター(Substance 3D Painter)が主な利用ツールだ。ときどき有料ツール(無料体験版あり)なども使っているため、ツールを見ただけでも初心者向けではないことは明らかだ。プロ向け、プロを目指すクリエーター向けの本だ。実際、内容も「プロなら分かると思うので省略」という具合で、事細かに一から十まで書いてはいない。完成型に至るまでの「考え方」と「簡単な手順のコメント」があるだけだ。なので、完成型のスクショを見て「手順を想起できるプロ」でないと、すぐに挫折しそうだ(笑)
なのでMayaの事細かな使い方などは書いておらず、Mayaのスクショ画像と、「何をどうやって何を作るか」の解説があるだけなので、Blender使いであっても「要するにこれをこうすればこうなる!」が分かる中級以上のBlender使いならば、おそらくBlenderでも作れると思う。他のソフトの場合も同様。
Zbrushについては知らない使い方が多かった
Zbrushでは多くの場合はスカルプト用途としての使い方が紹介されているが、本書では目の作り方、虹彩に関しては私があまり詳しくない機能を使って鮮やかに造型していた点が印象に残っている。
他にはマップなどから立体化するという手法も、とにかくスカルプトありきでのアプローチとは違った造型方法が勉強になる。
ただしこちらも機能を利用するための詳細な手順などは書かれていない。各自で調べてみてね、というメッセージがここからも読み取れる。要するに初心者向けではない。
基本的にMayaベース
私はまだMayaを学んでおらず、これから学ぼうとしていたところなのでまだ詳細はよく分からない部分もある。特に髪の毛生成ツールのXGenの使い方などは興味もあるが、あれで作ったモデルはそのままゲームキャラとして使えたかな?(ポリゴン数が半端ないような……?)などなど、ちょっとレビューしきれない部分もある。これは後からの自分なりの宿題になる予定。
本書の後半には参考情報として簡単なリグ入れのセットアップからポージング、Mayaで簡単な布シミュレーションを使ったポージング~画像レンダリングまでの紹介がある。ここら辺の情報はフィギュア造型時のポージングなどに応用できるかも知れない。
なお本書の後半の解説になるにつれて、何用途のモデリングか?を明らかにして情報を取捨選択する必要がある。静止画1枚絵を作る場合には確かにPhotoshopでの加工ができるが、ゲーム内利用であれば光エフェクトも含めてゲームエンジン上で作る必要があるので、それぞれのノウハウが異なる。
私にとってはZbrushの部分はよく分かるのだが、Maya+サブスタンス3Dペインターなどとなってくると、ちょっと知識が足りないので今後の宿題が増えた感じがする。ただ、ワークフローとしてやろうとしていることは理解できるので、あとは手を動かして実践あるのみだろう。
Maya + Zbrushユーザーには学びが多い?
私はたまたまZbrush+Blenderだが、最近、色々思うところがあり、BlenderだけではなくてMayaも学ぼうと思っていた所だ。そして本書では結構MayaとZbrushとを使った作業の解説が多い。だからもしかしたらZbrush+Mayaを考えている人にとっては両者の上手い使い方などを学べるかも知れない。
残念なところ
スクショのボタンUI画像が小さすぎる
スクショ画像の解像度に対して紙面の画像サイズが小さいため、画像上のボタン名などが小さすぎて読み取れない画像が多い。老眼だとさらにきついと思う。また要所も緑の枠線で囲むだけだったり矢印だけだったりと、読者の視線誘導がイマイチなので、ぱっと見ではよく分からない。考えながら読んでようやく理解できるくらいなので、読み進めるのにストレスを感じる。
言葉による解説が少ない
また前述したように、全てを解説しているわけではないので、読者がその都度、そのスクショとコメントを見ながら考えて作業をしなければならないのも地味にストレスを感じる。もう少し文字による情報が欲しいところ。
読者が欲しいのはヒントではなくて答えなのだが……。
推して知るべし!というシーンが結構多いので、読者の3DCGスキルによってはいい評価が得られないかも知れない。逆にある程度スキルのある人にはワークフローを知るいい機会になるかも知れない。
【結論】やろうとしていることに対して情報量が少ないので難易度が高い
表紙のキャラクターを完成させてレンダリングまで持っていくという作業量に対して、文字による解説がかなり少なくスクショ頼みになっている。本書は読者に対しての読解力とある程度のCGスキルを要求するので難易度が高い本になっている気がする。なので読者のレベルによって本書の評価は大きく分かれる気がする。
初心者ほど厳しい評価を付けるだろうし、プロに寄るほどワークフローからの学びが多くなるので高評価となる気がする。
私は「初心者寄りの部類」に入るので、個人的な意見としては「やろうとすることに対しての文字情報の少なさ故に、学習ペースが上がらず、遅々として前に進めずつまづくところも多い本」という印象になってしまった。
また使うツールがMayaの他にZbrush、サブスタンス3Dペインター、Photoshopなど、チュートリアル本としては多めの有料ソフトを駆使する点も初心者には厳しい評価になるだろう。エントリー勢は論外、という印象を受けてしまう。
逆に言うとプロはそれくらいのツールを使い分けて、使いこなして仕事をしているわけだね。
万人から高評価を貰える類いの本ではないと思う。プロ向けの本と言える。
表紙絵のようなクオリティの3DCGキャラクターを作ろうとしている人は、こういう本はなかなか貴重なので読んでみる価値があると思う。
なお、これは厳しい見方だが、こういう3DCGキャラクター作りの情報源は、有料の動画チュートリアルのほうが以前から充実している気がする。解説は英語で海外アーティストの教材が多いが、今回の内容の場合、書籍+少ない文字情報よりも、英語であっても数十時間もの丁寧な動画チュートリアルのほうが情報量や学びが多い気がする。
そういう意味では、本書は、やろうとしていることに対して文字情報量が少し足りない気がする。なのでチュートリアル本ではなくて、ワークフロー紹介本+コメント集という印象を受ける。
プロやプロを目指す人にとっては貴重なヒント集となるかも知れないし、初心者にとってはハードルが高い本だと思う。
万人向けではないので、後は各自で書店に出向いて立ち読みして考えて欲しい。
私のレベルではちょっとハードルが高いので、両手を挙げてオススメとは行かない、難易度の高い本でした。
謝辞
このレビュー記事の執筆に際し、株式会社ボーンデジタルのH様より書籍をご恵贈頂きました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。
あくまでも3DCGを扱う者として、Zbrushユーザーとしての目線かつ3DCGキャラクター製作初心者の目線で、いいところと悪いところなどを書かせて頂きました。
また私は基本的にはBlender使いであってMayaは詳しくはないのでその点のレビューもできていない点をご了承下さい。
このレビューが多くの皆様のお役に立つことを願っております。
大和 司
今回の創作活動は約3時間30分(累積 約2,852時間)
(828回目のブログ更新)
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