(約 6,100文字の記事です。)
こちらの記事の続きです。
3DCGとモチベーションについて
職業プロとして3DCGに関わる人は無関係で、四の五の言わずに3DCGの勉強をするしかない。
問題はアマチュアだ。3DCGを趣味で触ってみたいという人。今回の話のターゲットはアマチュア、セミプロとして3DCGに関わる人だ。こういう人たちにとって「3DCGでなければならない理由」というモチベーションの問題はとても重要だ。なぜ絵やイラストではなくて、3DCGなのか?と。動画にしてもアニメーションや静止画のコマ送りや平行移動(引き絵)でなくて3DCGアニメーションなのか?と。
3DCGを長く続けるにはこのモチベーションの有無が極めて重要です。知識的な問題にぶつかったとき、この強烈なモチベーションがなければ克服できないからです。調べて試行錯誤して解決するというプロセスにはものすごいエネルギーが必要です。(でないと諦めてしまう)
MMDのモチベーションは明確
MikuMikuDance(ミクミクダンス)のモチベーションはとてもシンプルで分かりやすい。自分の好みのモデルを好みの楽曲でダンスさせられる。それを眺める。とてもシンプルだ。そこから先、カスタムしたカメラモーションで撮影した動画を公開してもいいだろう。
次にモデルの改造への欲求が出てくることだろう。アクセサリや衣類の削除や追加、体型の調整など。ここで初めて3DCGによるモデル改造の必要性が出てくる。この記事のメインテーマだ。
最後に作成した動画の公開欲求、承認欲求だ。これについてはモデル作者、背景モデル作者や楽曲作者の利用規約という縛りが発生するので、自己責任で公開することになる。倫理的な問題と技術的な問題は一致しない。規約的にNGな内容でも技術的には公開可能だ。責任問題も生じるが、無視してやろうと思えばできる。作者に迷惑がかからない範囲で自己責任でなら、できてしまうことは多々ある。これらの問題は非常にデリケートなので深入りしないが。
PMXエディタの弱点
MMDのモデル改造で考えると真っ先に思い浮かぶのがPMXエディタだ。だが残念ながらPMXエディタだけでモデル改造を完結させることはかなり難しい。できたとしてもPMXエディタという特化型ツールに習熟しただけであり、3DCG全般についての応用性は低い。ここが問題。時間とエネルギーをいくらかけても「MMDとPMXに詳しくなっただけ」という、超えられない壁。狭い領域に特化して知識が増えても他の3DCGに応用できないのだ。
また2023年現在ではXISMOという選択肢もある。PMXエディタと相性がいいDCCツールだ。だがこちらもBlenderやMayaなどのDCCツールと比べるとかなりニッチなツールという印象。「習熟へのエネルギーと得られるもの」を天秤にかけると、なかなかモチベーションが上がらない。後述するSDEF, BDEFへの対処として魅力的だが、その1点だけの問題ならばBlender+PMXエディタで十分かもしれない。
私の場合、ここがモチベーションの壁になっていた。習熟しても応用が効かない知識の獲得にそこまでエネルギーを投じられるか?と
だが今回、Blender+MMD Toolsアドオンでこの問題をクリアできることが分かった。
Blenderでpmxファイルを編集するメリット
PMXエディタではなくてBlender+MMD Toolsアドオンを使うメリット。それはズバリBlenderというDCC(Digital Content Creation)ツールが使えるようになる&習熟できることだ。DCCツールとはMaya, 3ds Max, Cinema4D, Houdini, Lightwaveなどの3DCGを総合的に扱うツールの総称だ。当然Blenderも含まれる。
この観点から考えると、PMXエディタは「pmxファイルを編集するための専用ツール」と言える。
PMXエディタがDCCツールと言えるほど色々なことが全体的にできるかと言われると難しい。特にpmx限定な点で言えばDCCツールではない専用型の特化ツールと言えるだろう。
3DCGをやるなら早めにDCCツールを決めるべし
ただしDCCツール自体に互換性はあまりない。FBXファイル経由である程度の融通は利くが、リギングなどの細かい特性は各DCCツールごとに独自の仕組みがあったりするので互換性100%はあり得ない。(例えばMayaとBlenderではリギング周りの仕様が「似て非なるもの」になっている。微妙に互換性がないのだ。)
ソフト間の互換性の高さに関する魅力としてMayaが頭一つ抜けている。Mayaに対応するという他社ベンダー製ソフトは結構多い。Unity, UE5などのゲームエンジンは特にMayaと相性がいいし、AdobeのPremiere, After Effectsなどもそうだ。Adobe製品に限ってはCinema4Dも相性がいい。
これらに対してオープンソースで進化が早いBlenderは、実は他社ベンダーソフトは積極的には対応してくれていない。なので有志が無料で公開してくれるアドオンなどによってBlenderも使えるというシーンが多少ある。だがBlenderのアプデは早いので、最新版でそのアドオンが使えることは少なく、LTSという枯れた安定したバージョンを使うことが一般的だ。2023/06/18現在ではBlender 3.3系のLTSが最新版。
どのDCCツールがいいのか?
どのDCCツールを選ぶのがいいか?という議論はいつもわき起こる。結論から言えば「その業界や作業環境で必要とされる/指定されるDCCツールを使うべし」という、ごくありふれた結論に辿り着く。毎回ね。
Blender+MMD Toolsアドオンが最適
MMD Toolsはこれまでに複数の有志によって管理・運用されてきたが、現在のこちらのアドオンが一番安定して動作する印象だ(経験談)。またチュートリアルも丁寧だ。とは言え、ハッキリ言って「すぐに使い出せるほど分かりやすくはない」のだ。私も結論から言えば「体当たりで色々触りまくってようやく理解できた」という具合。
だがMMD ToolsによってPMXエディタのほとんどのことがBlender内で完結させられることがわかった。ごく一部の操作のみPMXエディタでなければできないのだが、それは諦めて「ファイナライズ直前にのみPMXエディタで編集する」ワークフローを構築すれば済む話だ。
なのでほぼほぼBlenderでpmxファイルを編集できることが分かった。
BlenderでMMDモデルを改造するメリット8選
ざっと挙げてみてもこんな具合だ。
- Blenderを使えるようになる(操作方法を学ぶモチベーション)
- リギングとウェイトの関係を理解できる(ボーンとウェイト変形への理解)
- UV展開とUV編集を理解できる(テクスチャリングの基礎の理解)
- お絵描きツールを触ってみることになる(CLIP STUDIO PAINTやPhotoshop、あるいはGIMPなど)
- Blenderを通じて一般的な3DCGモデルセットアップへの理解が深まる(MMD独自の実装と一般的なリグ入りキャラモデルとの違い)
- MMDとPMXの特殊性の理解(同様に一般的な3DCGモデルや3DCGソフトの実装の違い)
- Blenderで快適に編集するための必須プラグインの理解
- Blenderと連携できる他ソフトの利用(例えばGoBアドオンによるZbrushでのメッシュ編集など)
これをもしPMXエディタでごり押しすると上記の全ての可能性を潰すことになる。またPMXエディタを理解できたとしてもPMXエディタ流の独自実装な内容については、あくまでもPMXエディタに習熟しただけであり他のDCCツールの場合はどうか?という知見が手に入らない。井の中の蛙になり得る危険性。
だがBlenderとPMXエディタの両方を知れば、知見が一気に広がる。
Blenderを使える状態にする必要がある
だがBlenderといえどもDCCツールなので、1つ1つの作業手順については結構手数が必要。なのでそれ相応の時間とエネルギーをBlenderの操作方法の習得に充てなければならない。上記の各工程についても操作方法自体は10~20手順のバリエーションがある。それらを反射的に使えるようにしないと作業がいちいち止まってスムーズに作業できない。
オススメは書籍1周(Kindle本でもOK)
今ではBlenderも2.8系から3.3系まで色々な書籍が出版されている。ここ2, 3年で急激に増えた。あとは書店に足を運び、立ち読みして、一番しっくりきたお好みの書籍を1周してみればいい。
1冊やればとりあえず基礎はOKだ。
Kindle本でもいいが、私は書籍をオススメする。この辺は各自のお好みで。
書籍を1周するメリットは、
- やるべきことが1冊に全て収まっている
- 第三者による校閲・校正が入っているのである程度分かりやすい表現内容となっている
- 紙をパラパラとめくって全体を俯瞰できる(復習時に効果抜群!何を覚えていて何を忘れたか、何に未着手かの俯瞰が一瞬でできる。Kindle本ではできない)
- 途中で作業を中断しても即再開できる(紙のしおりを挟むだけでいい。Kindleアプリの起動すら不要)
ウェブ上で情報収集する場合の注意点
もちろんBlenderの情報はウェブ上に散在している。だがその内容は古いバージョンで不正確だったり、正確だったりしても分かりやすく書いてくれている保証がない。だがどうしても無料で情報を集めたいならば以下の点に注意して情報収集したほうがいい。
- Blenderのバージョン(2.8系以降であっても2.9から3.3系で大きく変わった部分もあるので)
- アドオンのインストールによるホットキーの上書き(一部のアドオンはBlenderのデフォルトのホットキーを上書き利用するため)
- その記事の執筆者の環境に、自分が知らない未知のアドオンが入っている可能性(純正Blenderでは表示されない項目がそのアドオンによって追加されていた場合、知りようがない)
- その記事に紹介されていないBlenderの設定がONになっている可能性(編集モードやビューモードが違うと記事内の画像にある項目が表示されない場合もある)
- そもそも指定されたアドオンがそのBlenderバージョンに未対応な可能性もある(当然正常動作しない)
- アドオン自体のバグの可能性(特定の操作で正常動作しない可能性)
ウェブ上の記事を参考にする場合にはこういう罠があるので、初心者が記事通りに操作しようとしても記事通りに動かず、大きな壁にぶつかることもしばしば。なのでウェブ上での情報を参考利用できるようになるためには、まずは脱・初心者になるしかない。そのためには最初に書籍1周で基礎知識の補充、というかBlender流の使い方のクセを体得したほうが早い。そしてこの学習は断片知識の寄せ集めではなかなか時間がかかる。書籍で一気に学んだ方が効率的だ。
書籍にはところどころに「コラム」などとして便利な参考情報がちりばめられていることが多い。その情報をウェブ上で得るには結構苦労することも多い。急がば回れが書籍学習のメリットだ。Blenderを触ったことすらない人は、まずは書籍学習を強く推奨する。
BlenderでのMMDモデル改造の記事執筆について
そしてBlenderの
- メッシュ操作(編集モードとスカルプトモードでの変形操作)
- ウェイト調整(ボーンごとの手動調整や他メッシュからのウェイト転送)
- UV展開時のUVアイランドの操作
- 簡易なテクスチャ調整(Blenderでの簡易調整+お絵描きソフトでの仕上げなど)
ができるようになれば、ようやくMMDモデルを改造できる。これらはBlenderの書籍を1周すれば誰でもできるようになる。1つ1つは単純操作でも学ぶべき分野が多い。なので書籍で一気に必要な知識を詰め込んだ方がいい。
Blenderの基礎知識以外が重要
私が執筆予定の記事では、残念ながら上記のようなBlenderの基本操作については解説しない。そこから書いていては私が本を出版できるボリュームになってしまうので😭読者様が既にBlenderの基礎知識がある状態を前提として、MMDモデルを改造するためのたくさんの罠の回避方法を「コツ」として記事にまとめる予定。
MMDモデルを改造する上で、上記のBlenderの基本操作を知っているだけでは回避できない様々な罠に遭遇した。そのトラブルシュートに本当にエネルギーを取られた。だからこそ記事を執筆しようと思ったわけだ。
そしてその罠の原因と解決策を探る上で、MMD独自の罠・特殊性が理解できたし、その理解は今後の3DCGモデリングで重要なヒントにもなる。なのでMMDを通じてダンスムービーを楽しむだけでなく、今後の3DCG関連の色々な分野に応用できる知恵もまた身に付けられるような記事にするつもりだ。
例えばBDEFとSDEFによるボーンの曲げ表現の違いとか。MMDはSDEF対応だがBlender他多くのDCCツールでの編集ではBDEFオンリーなので関節の曲げ表現がMMD・PMXエディタ上とBlender上では見え方が異なる。BDEFで解決策を探るか、MMD限定を理解した上でPMXエディタ上でSDEFに変更するか?(編集済み関節を見るだけなら実はMMD Toolsアドオン経由でBlender上でもSDEF変形は閲覧可能。ただし編集は不可。PMXエディタかXISMOが必要)
またこの問題ではPMXエディタでのTransformビューのクセなども関わるため結構ややこしい。
というわけで次の投稿ではいよいよMMDモデル改造の記事内容に入っていきます。
今回の創作活動は約2時間30分(累積 約3,250時間)
(890回目のブログ更新)
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