(約 4,100文字の記事です。)
Zbrushはとにかくスカルプトが売りなのだが、実はブラシによるスカルプト「以外の方法」を上手く使うと効率よく作業ができる。今回はブラシで彫り込んだり盛り上げる以外のポリゴン操作方法の紹介。Zbrushを俯瞰でざっと眺めるような記事です。詳細はありませんが、一度ご自身のワークフローを見直すのに役立つかもしれません。
1つの頂点だけを制御する場合
Move系ブラシを小さくして1つの頂点を動かす
最初に思いつく方法だ。だが、移動方向が必ずしも思い通りになるとは限らない。ハイポリ気味になると選ぶことすら困難。
ZmodelerのPoint Atciton > Transpose
選択した一つの頂点だけをギズモで制御可能だ。これが最小単位のポリゴン制御ということになる。ピンポイントでかつ厳密に3軸方向への制御が可能だ。Move系ブラシよりも正確である。もちろん、Point Atciton > Move, Slideでもいいが、以下ではMoveとSlideは省略してTransposeとして紹介する。
2つの頂点だけを制御する場合(つまり辺の操作)
こうなるとMove系ブラシでの移動は不可能だ。ブラシの直径内に3つ以上の頂点が含まれることを避けられない場合が多い。
ZmodelerのEdge Action > Transpose, Target > Edge を選んだ制御がこれに当たる。が、ぶっちゃけ2つの頂点だけの制御ってのはほとんど無いので知らなくてもなんとかなる。1つの頂点移動を2回やってもいいので。だが、2点の相対的な関係を維持しようとするとZmodelerでないと難しい。特にローポリモデルでの微調整では役に立つこともあるだろう。
3つか4つの頂点だけを制御する場合(つまり1つの面の操作)
さすがに1つの面の操作になると、Move系ブラシでも使えるようになる。ただし、周囲の頂点の状況によってはブラシでは上手く選択できないこともある。
なお、当然ながら、ZmodelerのPolygon Atciton > Transpose, Target > A Single Polyなら完全に1つのポリゴン面を操作可能だ。
ここまでを考えると、実は1つ以上の面の操作ではブラシ操作が有効だが、それ未満の操作ではZmodelerでないと難しい。特にハイポリであれば1つの頂点の制御はブラシ選択では難しいだろう。Zmodelerの必要性がここにある。ピンポイントでの操作にはZmodelerが不可欠なのだ。
では、ここからは2つ以上のポリゴン面の操作について考える。以下、複数のポリゴン面のことを単にポリゴン面と呼び、「1つのポリゴン面」と区別することにする。
円形領域のポリゴン面の制御
もうおわかりのように、これでようやくブラシによる制御が可能になる。ただし、ここから2つに分岐する。
円形領域のポリゴン面をブラシプリセットの形状にする場合
この場合のみ、ブラシの盛りで形を整えることができる。盛り+SHIFTでのスムージングもこの範囲に含めるとしよう。こう考えると、ブラシのみで作れる形状には限界がある。あるいは、それを複合的に組み合わせて形を作ることになる。あまり効率がいいとは言えない。
円形領域のポリゴン面を滑らかな円形状にする場合
いよいよマスクという概念が活躍し始める。というのも、単に円形状の制御であればブラシ操作でいいことになる。
ブラシ操作は、考え方を変えると、綺麗な円形状のマスクがリアルタイムで効いている状態なのだ。だが、ここで円形状に滑らかに、となるとマスクブラーの出番である。そしてギズモで引き出すと滑らかな形状を作ることができる。ブラシプリセットにはない滑らかな形を作るためには、マスクブラーの概念を知っていたほうが早く作れて仕上がりが綺麗なのだ。
円形領域のポリゴンを上記以外の任意の形状にする場合
ここでついにギズモのデフォーマーの出番である。
デフォーマーにはたくさんの種類があるが、オススメなのは画像の赤枠のデフォーマ類である。いずれもブラシでもマスクでも作ることが不可能な大きな形状変更ができる。デフォーマなしでも手間をかければブラシで盛り上げて作れるだろうが、その効率と滑らかさが違う。デフォーマについてはまた別の記事で考えたいが、デフォーマの使いこなしが一つのターニングポイントになると筆者は考えている。
例えばこの髪の造形方法などが私にとっては新鮮だった。
YouTubeで「Zbrush Deformer」で検索するとたくさん参考になる動画が出てくるので興味のある人はどうぞ。
デフォーマが良い理由
ブラシはブラシ半径内の頂点群にしか影響を与えられないが、デフォーマは広範囲の頂点群に滑らかに影響を与えることができる。また、その影響度合いも微調整できる。マスクブラーも滑らかに影響を与えられるが、その度合いの調整が難しい。つまり、デフォーマは、ブラシのいいところと、マスクブラーのいいところとを兼ね備えているのだ。
そして何よりも、その影響を3次元的に与えられること。例えば、ブラシの円形領域もマスクもポリゴン表面に分布する2次元的な配置しかできないのに対し、デフォーマは360度から頂点群に影響を与えている。どちらかというとカーブブラシ的な要素がある。
なので、デフォーマでの操作により、ブラシ的、マスク的、かつカーブブラシ的な複合的な変形を一度に行えるので、造形としての効率がとてもいいのだ。
これが強い。
任意の領域のポリゴン面の制御
ここにくると再びマスクの存在が重要になる。加えてマスクのエッジのブラー制御も重要だ。つまり、マスクの使いこなしが必要になる段階だ。ブラシさえできればいいのではない。マスクをかけて、描画領域をはみ出すような直径の大きなブラシで大胆に盛ることができる。が、ここでもやたらと盛りブラシの前に、ギズモ変形やデフォーマが使えないかをまずは考える必要がある。難しければMove系ブラシが選択肢に絞られる。
くどいようだが、ブラシは基本的には仕上げ専用なのだ。Move系ブラシとクレイビルドアップくらいが例外。なぜならばそれらは大きく形状を変えられるからだ。それ以外の、ちょっとずつしか変化させられないブラシは全て仕上げ専用。だから、まずはブラシ以外で造形できないかを考えるの最初の思考ステップなのだ。
ポリグループごとに形状操作する
Zmodelerや特定の手段を使うと、マスクを使わずともポリグループ単位でのポリゴン面の操作が可能である。
だが、Zmodelerの場合はポリグループ単位での調整の意味合いが強い。また、特定の手段でポリグループ単位で操作できる場合でも、それは微調整程度でしかない。いずれにせよ、大きな形状変更についてはマスクが必要である。
全体のポリゴン面の制御
こうなると一見すると、単なるギズモによる全体移動や拡大縮小に思えるだろう。ところが、ここでもギズモのデフォーマが利用できる。円柱を紙コップ型にしたり、直立した人間を湾曲させるなど可能。ブラシではとうていできないことをまだまだやれる。Zbrushでブラシだけにこだわるなと言う警鐘はここでも言える。
実はブラシでできることのほうが少ないでしょ?
こうして振り返ってみると、実はブラシでのみできることはごくわずかしかない。一方、ギズモ、デフォーマ、マスクやブラーの組み合わせでできることのほうが圧倒的に多い。
それでも、仕上げだけはブラシの登場なのだ。
見た目が豪華になるので、どうしてもブラシの表現力に目を奪われがちになる。
だが、そのブラシを入れる基本的な形は、ブラシ以外で作れるし、そのほうが効率的なのだ。なので、ブラシでないと表現できないことと、ブラシを使わないほうが早く作れる部分とを自分の中で分けて造形したほうが圧倒的に効率がいい。
まぁ、Zbrushを始めた手の頃はどうしてもモリモリするのが楽しくてブラシ一辺倒になるが、例えばエッジを綺麗に立てられない・広い領域で面が滑らかにならないなどの壁にぶち当たる。Zbrush Coreの作例が全体的に丸っこいのもそのためだ。そのほうが作りやすいし、綺麗なエッジを立てようとなると、色々と技術が必要になるからだ。
なぜならば、円形ブラシ領域で盛り上げられる形はブラシプリセットの形であり、クレイビルドアップ以外のほとんどのブラシは滑らかにしか盛り上がらないから。エッジを立てようとすると、マスクとギズモやサブツール合成など、ブラシとは別の技術が必要になる。また、SHIFTで必ずしも思い通りの滑らかな面に収束してくれない場合の対処方法も、ブラシ以外の方法となる。
ブラシだけに頼らないで形を作ることを意識する
言いたいことはこれなんだ。Zbrushとはいえ、モデリングなんだから完成形に辿り着くことが必要で、その過程は効率的ある方がいい。その中で、ブラシでしかできないことなのか、ブラシ以外のほうが早く形作れるかを考えて、盛り方を決めればいい。
本物の粘土と違ってポリゴン内の中身はないんだから、要するに頂点のXYZ座標を決めるだけの作業なんだから、じわじわと何手順もかけて移動させるよりもドラッグ一発で移動させた方がいいに決まっている。
意識したいのは、最終的なポリゴン面に頂点群があるかどうか。そうなっていない形状に対してブラシしても意味ない。最終的な位置付近にまずはポリゴン群があることが前提なので、そうなっているかどうか、また、どうしたらそうなるかを考えたとき、ブラシが最良なのかどうかを考えること。マスク+ギズモの数回の作業のほうが早いならそれを選べばいい。
というわけで今回は、ブラシを使う場合と使わない場合とで操作方法を変えたほうが早く仕上がるよ、という記事でした。
今回の創作活動は約45分
(累積 約611時間)
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