なぜZbrushのカーブブラシは使いにくいのか

(約 4,600文字の記事です。)

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カーブブラシは魅力的だが使いにくい。なぜだ?それを探った日記。

目次

いきなり答え 厚み調整が不自由

カーブブラシ、カーブラインは立体的にかける。そしてカーブの輪郭もカーブグラフを調整すればできる。(メッシュ自体は左右対称になる)。

問題は、厚さなのだ。この厚さ、Z Intensityで調整できるが均一になる。なおカーブのオプションのIntensityボタンがあるがこれをOn/Offしても変化無し。恐らくバグ。ずっと放置されているバグ。絶望的だ。なので厚さはカーブグラフではどうすることもできない。

はい、答え、カーブブラシでは厚さを動的に調整することができない。なのでメッシュを確定させ後に頂点群をムーブ系ブラシで移動させて調整することになる。あるいは膨張系ブラシ?または地道に普通にブラッシングで。

カーブラインでも後から3次元的調整が必要で、メッシュもまた調整=二度手間

これが謎の手間の正体だ。カーブライン自体が3次元であるため、理想のラインにするためには何度も3方向以上からのチェックが必要。でようやく完成したメッシュも、厚さを調整することになるので、これまた3方向以上からのチェック&盛りが必要。つまり1つの毛束を作るのに2度手間なのだ。だからカーブラインを使った造形ではなぜか時間だけがやたらとかかるわけ。ようやく分かった。

カーブラインの出番とは

実はよく考えてみると、出番がかなり限られる。ロン毛のような中間が繰り返しメッシュからなるチューブ状、あるいは任意の形状で均一な厚さの物。幅はカーブグラフで調整できる。だから髪で言うとロン毛以外に出番がない。それ以外だとまぁ、チューブだとかパイプだとかクリーチャー系の触手だとか。後は出番がない。

カーブラインメッシュとはそもそもなんだ?

これ、IMブラシの派生で、頭とお尻と中間の3つのポリグループからなるメッシュ。カーブブラシにするとこの中間メッシュがリピートされて細長いメッシュになるわけだ。

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で、カーブのグラフを制御すると「幅」は確かに細くしたり太くしたりできる。

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だが厚さが均一だ。これが使いにくい。髪なんかはカーブの箇所によって厚かったり薄かったりすべきだがこれがカーブ制御時にできない。だから使いにくい。いちいちメッシュを確定させた後じゃないと調整できない。当然その後にカーブラインを編集できない。一方でZSphereなら丸形ではあるが作りながらでも厚み付けの調整をしながら全体を整えられるだけまだマシ。

カーブ確定後の調整手段

もはやローポリ図形の調整手段そのものである

  1. ムーブ系ブラシで1頂点、あるいは付近の数頂点ごと移動
  2. 必要に応じてマスク+マスクブラーで範囲制限をかけて移動
  3. ギズモで移動や回転
  4. トランスポーズブラシで中心点を制御した回転
  5. デフォーマ系の変形も使える場合もある

だがこれ、結局髪の厚みを付けようと思うと上記の手段を駆使して形を整える必要があるわけで、本質的には回避不可能の操作と言うことになる。

ということは、カーブラインで作るメッシュって、結局はラフモデリング用の下地メッシュを作るのみってこと?

頭部から分離した単体メッシュであれば別にカーブブラシに限らない

例えばIMメッシュを頭皮に貼り付けても、単体のメッシュは出来上がる。ロン毛である必要の無い前髪系メッシュであればそこから頂点移動で形を整えることは可能だ。だからカーブメッシュから作る必要はない。IMメッシュならば頭部の表面に沿って湾曲させるオプションがあるので綺麗に頭部に沿う。おまけに厚みも事前に付けておいた状態で再現される。

つまり、メッシュの厚みを手動調整する前提ならば、ロン毛以外ではカーブメッシュの出番がほぼない、ということになる。だって最後にメッシュ調整で形を整えるならば、単一メッシュを挿入できる手段があればいい。IMブラシでもいいし、ZTL読み込みでもいい。ロン毛以外の髪の長さはだいたい決まっている。各種大中小の3つ程作ればそこからムーブ系ブラシやマスク+ギズモでちょっと引っ張って、伸びきったメッシュ部分にZModelerでエッジループを2,3個挿入してあげれば十分ローポリメッシュの毛束として成立し得る。

そうなるとむしろカーブブラシよりも「事前に程よい厚み付けも完了した髪用IMブラシを自作してストックしておく」ほうが遥かに作り始めの効率がいいことになる。綺麗な短冊形ならば初回限定だがギズモのデフォーマで任意の形状に曲げられる。そこからはマスク+変形作業での修正に限定されるが、できなくはないし、それはカーブブラシで確定させたメッシュの調整であっても同じだから、差は無い。

カーブブラシの活用シーンはかなり限定的?

そんな気がしてきた。需要の少ない高難易度のプラグインの開発に盲目的に取り組む前に、そもそも自身にとってのカーブブラシの必要性の大小を見極めようと思って色々いじっていたが、こりゃ、どうやら微妙になってきた。

……やはり開発しないかも知れない。だって自分ですら使わないかも知れないのだから。ボツ案件の可能性大です。今のところ作る必要が無いと感じた。

別島のメッシュになっていてローポリならばそれでいい

少なくとも自分にとっては、サブツールの別・同一に関わらず毛束がそれぞれ独立したメッシュになっていて、それがローポリならばエッジが立てられるのでそれでいい、というのが一つの結論。最終的に1つの毛束に結合してハイポリブラッシングになるかどうかはともかく、ローポリ+ダイナミックサブディブのエッジ+滑らかカーブが作れるならばそれでいい気がしている。

ある程度ローポリならば、マスク+マスクブラー+トランスポーズツールでRを制御した曲げ回転が可能だし、それに習熟すれば他の変形も容易になる。もちろんその後厚み付けの調整もあるけれど、それはカーブブラシを使った場合でも必須の工程だから問題にならない。そうなると、カーブラインを引いたり修正したりするほどの長いパーツを作るかどうかだけが問題。少なくとも髪については、ロン毛以外だと不要という結論に(笑)

髪用ブラシ大中小のセット作成と、マスク+トランスポーズブラシの習熟でOK?

髪用ブラシ大中小のセット作成と、マスク+トランスポーズブラシの習熟でOKな気がしている。

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今のところのエレノアさんの毛束は複雑じゃない。強いて言えばポニテくらいがややカーブブラシでの調整でもいいかな、程度であるが、ポニテを一つの毛束としてみた場合、乱れ毛束を追加することを除けばやはり全体としてはマスクとトランスポーズで調整可能な範囲だ。

もちろん新キャラにはロン毛の銀髪乙女を予定しているので(笑)ロン毛の活躍のシーンはあるのだが、それも1束ずつ分離されているのであれば、確定ディバイド1回程度かけてからマスクの広大なブラーとトランスポーズブラシで曲げやねじれは調整可能と言うことになる。カーブブラシなら立体的な配置でベースメッシュを作れるというメリットがあるだけで、そこから先に差は無い。そうなると、初回にある程度の形になるまで「そのキャラ専用のロン毛毛束」を作るのは大変だが、その完成メッシュをIMブラシに登録し、2回目からはそれを貼り付けて角度を微調整するだけ、ならばもはやカーブブラシの出番がない(笑)マスク+ブラー+トランスポーズで事足りる。

自作ブラシについてはXMD ToolBoxの導入で無限に作れるからその心配は無い。

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やっぱりカーブブラシの出番は少ないのでプラグイン開発断念w

という結論です。自作IMブラシを増やした方が賢明。髪についてはフィギュアを作るわけではないのでハイポリ化はしたくない、というのが本音。鋭いエッジと滑らかカーブがスキなのでダイナミックサブディブを多用したローポリベースが好み。なので毛束別にメッシュを区切りさえすればあとはローポリ操作の早さが命と言うことに。それに関してはカメラ移動の高速化によりスピードアップが実現できているので問題ない。

あとはハイポリへのポリペイント落書きの画力だとか、造形そのもののセンスだとか。だがそれはもはやカーブブラシとは何の関係もない。

つまりまとめると、カーブブラシは自分にとっては、その形が魅力であったから魅力的に思えたが、造形手法そのものを見直してみるとただのラフモデリング用のベースメッシュ作成手段でしかなかった、という事です。それ以外では極狭い範囲内での有効活用にとどまる。少なくとも髪の造形で多用するメリットは皆無。ちょろっと長いアホ毛やロン毛を数本作る際に使うかな?程度。毛束としてはロン毛でもショートでもスカルプトリスプロモード+綺麗なメッシュへのリトポのほうが早い。あるいは既存IMブラシの挿入で一発完了。

結局は毛束のバリエーションにすらも「パターン」があるので、作るごとにローポリベースを自作IMブラシとして蓄積し、似たような形はそれを呼び出してから造形を始めるのが省エネ。都度作るのは愚かしすぎる。まぁそこに至るためにはIMブラシ運用への習熟+XMD ToolBoxの導入という2つのハードルがあるのだが。

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プラグイン開発は再び一端終了のフェーズかな

というわけで、もうお腹いっぱい。Zbrushでのプラグイン開発フェーズはついに一端終了かも知れません。あとはもう自分で好きなように造形してみないとZbrushの不便なところが分からない。なのでプラグイン開発は再び一端終了のフェーズで~す。

今回の創作活動は約1時間(累積 約895時間)
(299回目のブログ更新)

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