(約 5,300文字の記事です。)
明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
タイトルの通り、年末年始にかけてZbrushとBlenderとの連携を模索し続けてきたわけですが、とりあえず「いつでも自由に両者を往復」というスタイルは諦めました。
ZbrushとBlenderの特性は矛盾する
今更何を?(笑)ZbrushとBlenderとは全く逆の特性を持っているため「連携させればかなり効率的に何かができるかも?」と思ってその道を探ってみたわけですが、決定的に無理でした。
水と油です。中性洗剤を入れて「中和」する事で乳化して両者は混じり合いますが、乳化した後に「水の性質」や「油の性質」を取り戻したり乳化状態に戻すことは、非常に難しいことが分かるかと思います。
Zbrushはハイポリに強い。ハイポリに起因するリトポやデシメーションなどにも強い。だがリグポージングなどはなくあくまでもギズモ+マスク操作が基本となる。
対してBlenderはハイポリに弱い。Blenderはローポリからミドルポリまでは強く、リグ入れポージングができる。メッシュ操作に関する時系列に囚われない可逆性がある(モディファイア、ポーズ変更など)。
ZbrushとBlenderの連携は「ミドルポリ」まで
理由は簡単で、両者を相互運用するためには「ハードルの低い条件に合わせざるを得ない」のだ。つまり、Blenderに合わせてミドルポリまでしかメッシュを往復させられない。仮にハイポリにした場合には、可逆性を保ったまま一度ミドルポリまで落としてからBlenderと往復させることになる。どうやってもZbrush側ではミドルポリとハイポリとの往復が必要になる。
それを実現させるためにはサブディビジョン サーフェス モデリングしかない。だがサブディビジョンレベルを持ったままでは制約が多く、扱いにくいことも確かだ。
そうなると、どんどんZbrushの「本来やれることがBlenderとの連携を担保するためだけに制約される」のだ。
では「最初から最後までZbrushオンリーでよくね?」という発想も分かる。現にそういう造形師が多いことも間違いないだろう。でもね、せっかくデジタルなのにアナログ手法のままでいることにとても違和感を感じているのだ。そこに何か挑戦していたいという思いがあります。。。
テーマは「可逆性」です。
ワークフローの切り分けしかない
なので、「いつでも常に」ZbrushとBlenderとの連携は、諦めざるを得ない。ローポリからミドルポリまでのワークフローならば往復可能だ。リグポージング前ならば気軽に往復できるし、トポロジ変更もどっちからどっちに移すことも可能だ。今ならばクリース情報も相互に往復できる。
そしてリグポージングでも「ある段階」までならばAポーズ+ポーズライブラリへの保存と読み込みが自由にできるわけだから、その段階で十分にポージングを煮詰めればいい。
そして、ポージングの決定と、ミドルポリまでのトポロジを含めたベースメッシュを完成させたら、ここでZbrushとBlenderとの往復を切り捨てることになる。
ロケットが大気圏を脱したら空の燃料タンクを切り捨てるように。
Blenderとの往復を切り捨てることで、Zbrush本来の作業ができる。ハイポリでの加工が主になるだろう。この段階に入ってからのBlender利用は、夢想になる。そもそもそれができていれば苦労していない。だがハイポリ状態ではBlenderが受け取れない。
ぎりぎりの妥協案「サブディビジョン サーフェス モデリング」
サブディビジョン サーフェス モデリングとは?
長いので当サイトではSDモデリング(Sub Division モデリング; SDモデリング)と略記します。私の造語です(笑)
Zbrushでサブディビジョン・レベルを設定した状態でモデリングすること。Zbrushに限らずBlenderでも「サブディビジョンサーフェス・モディファイア」または「マルチレゾリューション・モディファイア」をかけた状態でモデリングすること。ポリゴン密度を上げ下げできる(可逆である)ことがポイントになる。
(ただしZbrushについてはサブディビジョンの利用開始によって最初の形状が若干変わる点に注意。元の形状とサブディビジョンレベル1とはメッシュの形状が厳密には一致しない。ここだけ注意。非可逆。履歴やバックアップがなければ後から元に戻せない。)
SDモデリングならば、Zbrushでも一応はハイポリとミドルポリとの往復が可能だ。これがギリギリの妥協案ということになる。ただしこれを担保しようとすると以下のような制限が生まれる。
- トポロジ変更はBlenderからZbrushへの一方通行(Blender側のウェイト値保持のため。ただしリグポージングなしならば無問題で双方向)
- トポロジ変更時には転写によってアナログ的にハイレベルのサブディビジョンレベルが再構築されるため失敗する可能性がある(GoBまたはフリーズ解除時のいずれでも)
要するに、えらくZbrushでの操作がしにくくなるわけだ。特に2の「メッシュ復元時の失敗のリスク」は懸念材料だ。アナログ的な手法(転写、SDレベル上げ、転写の機械的な繰り返し)によってメッシュの形状を復元するわけだから。
(Blenderでいうところの「シュリンクラップの限界」にぶつかることになる。精度、細部の再現性の問題。)
ただ、これらの制約を受け入れられるならば、ワークフローとしては「ミドルポリから若干のハイポリまではBlenderとZbrushとは往復可能だしポージング変更も可能」ということになる。
ただしついて回るのが常にサブディビジョンレベルの扱いだ。当然基本メッシュ以上のハイレベルのメッシュ形状については両者に互換性がない。色々とまどろっこしい工夫をすることで「何とか」互換性を維持できるものの、泥臭くって、とてもじゃないが「シンプルでスマートな連携」にはならない。「ギリギリ何とかできますよレベル」だ。
そのまどろっこしさよりも、ワークフローとしてはスパッとZbrushとBlenderとを切り離すワークフローの方が、遥かにシンプルで分かりやすい。なのである段階で可逆性は捨てるワークフローの方が、分かりやすいし、Zbrushの実力を引き出しやすい。
ウェイト塗りの面倒くささ
正直、グラデーションウェイト部分は自動でいいと思っている。鎧かぶとなどのハード系パーツについてはウェイト1で塗りつぶす手法だけを身に付ければそれでOK(領域選択の保存と再生、要するに頂点グループの使い方)。ポージング時のひずみは、スカルプトで直せばいい。あらゆるポーズで問題のないウェイト塗りとは、それはもうMMDキャラやVRChatのキャラのセットアップの仕事になると思う(笑)非可動の静止メッシュにそこまでエネルギーを投じるメリットはないと思う。スカルプト時に補正すればいいだけだから。
とはいえ、Zbrush+Blenderだけでも学習量が多くて嫌になるのに、そこにリグやウェイトの知識が必要!となると、手を出す人も少ないだろう。もちろんリグポージングなのでポーズ変更が早いので、ポージングのバリエーションを複数作ろうとすると製作時間はすぐに逆転が可能だろう。加えてリグとウェイトの知識は、絶対に損しない知識だ。
ただ、あとは
- 「ウェイトの学習+ウェイト調整+ポーズ修正の手間の総時間数」
- 「手動でZbrushでギズモ+マスク+変形の都度の修正の総時間数」
両者を天秤にかけてどう判断するか?ということになる。
もちろん前者の方が本質的にデジタルであり可逆性がある。だが修正量が少ない場合、後者の方が早い可能性も出てくる。1回のみの修正だと考えれば圧倒的に後者が早い。だが、結果として4~5回もの修正でかつ常に手足を複数箇所も微調整となると、どっちが得か損か分からなくなる。さらには他のサブツールで手足に追従しているパーツがあるか否か(籠手や膝ガードなど)でも変わってくる。
こうなるとケースバイケース過ぎて、一般論として検討できないのだ。なので検討を打ち切ることにしたわけである。
ただ、生涯学習として3DCGに関わるならば、リグ変形とウェイト調整は知っておいた方が便利に出来ることが多いことは間違いない。少なくともDCCツールを扱う上では不利になることはない。Blenderに限らず基本概念は同じだから。(操作手順や操作方法が違うだけ。)
最終的にはクリエーター自身の考え方と成長性と成果との兼ね合い
うん、つまりは最終的にはご自身で判断してね!ということになる。これも話を一般化しにくい原因だ。リグポージングの修正や可逆性に魅力がある人と、アナログ的なギズモ+マスクによる修正の方が楽でいいやという人、どちらも間違いじゃない。それによって身に付けるべき知識と、使うべきソフトが異なるだけだ。
デジタルの場合、何を使ってどう作るかはとても重要なのだがそれは作り手に取ってだけであって、一般的には他人は「成果物だけに興味を持っている」わけだから、その完成までの過程をどう考えるかは、やはりクリエーター自身の考え方にかかっている。なので、手法を一般化して議論できる状態になっていない場合には「各自の判断で最良の手を選ぶべし!」という話で終わる。結論は出ない。
この難しさも、ZbrushとBlenderとの連携を模索する上でそろそろどん詰まりかな?と感じた理由である。
要するに、各自で判断して上手く使ってね!ってことだから、それ以上、何も言えないのだ。。。
結論 各自で情報収集して判断すべし!
何とも締まらない結論だ。私にとっていいと思ったワークフローは「興味のない人やアプローチ方法が異なる人からすれば全く無駄な情報」だし、私がいいと思って紹介した手法も、これまた全然琴線に触れることすらないかも知れない。そんな情報に時間とエネルギーを使って模索し続けることに、ちょっと疲れた(笑)なのでいったんは終了にしたいと思っている。
もちろんこれから先、BlenderやZbrushが進化して「不可能が可能になった」場合には、また新たなポテンシャルが生まれるわけで、その結果別のワークフローができるかも知れない。そうならない限りは、そろそろZbrushとBlenderとの連携のワークフローの模索は、一段落つけたいと思った。
というわけで今後も両者の動向を見つつ、いったんは「Zbrushの使い方の向上」「Blenderの使い方の向上」という2系統の模索に別れて進もうと思っています。
今回も長々と書いた割には結論が薄っぺらい(笑)
今回の創作活動は約2時間30分(累積 約2,104時間)
(666回目のブログ更新)
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