(約 5,900文字の記事です。)
今日から少しずつ3DCG活動に復帰します。ここ2ヶ月ほど色々あってほとんど活動休止状態でしたが、ようやく動き出します。
Zbrush関連の言及が増えます
今まで結構な時間をかけて「悩んでいた」。
悩んでいたのだ。Zbrushは好きだ。だがここ最近のZbrushの進化の方向と、自分がやりたいことの方向の違い、Zbrushプラグイン開発者としての実績とマネタイズと需要・市場規模の小ささなどなど、色々と相反するものが多かったのだ。
あっさり捨てられるならそれで良かったが、そうもいかない色んな事情があった。だから苦しんでいた。
だが色々考えた末、一応の結論を出した。まだしばらくはZbrushを使おうと決めた。なので少なくとも1年間はZbrushを使おうと思うし、Zbrushプラグイン開発も続投しようと決めた。
ここについては結構な葛藤があった。自分では使うつもりがないのに、マネタイズという「あって困らないもの」をどこまで求めてZbrushプラグインをサポートするかという矛盾。要らないけれど、あっても困らない。こういう微妙な感じが一番たちが悪い。熱意がないから成果物に魂がこもらない。結果、中途半端になる。実際、ここ1~2年ほどを振り返ってもそうだった気がする。
ツールとしての魅力と使い易さはイコールじゃない
自分のやりたいことが「実はミドルポリ程度」と分かった瞬間から、Zbrushでなければならない理由がなくなった。これが一番大きい。Zbrushはハイポリでデジタル粘土が強みだから、ミドルポリ以下だとBlenderで事足りる、という時代の流れもある。使い易さに差はあるにせよ、できなくはない。そうなると、快適さは「贅沢品」になる。なくてもできるわけだし、技術の進歩は過去の手法を一瞬で駆逐する。それがデジタルの恐ろしさでもある。
とはいえBlenderとZbrushを比較すると、スカルプトやモデリングで比較しても一長一短がある。
個人的にはZbrushのいくつかの機能が使いやすいので魅力的なのだが、一方でZbrushではできないことも結構あって、その際にはBlenderとの往復でしのぐことになる。この往復を面倒と考えるか使い分けと考えるかで意見が割れるだろうが、個人的には「面倒」と感じる。やはり1つで統一できれば色々といいことが多い。
というのも、そもそもモデリングという1つの工程において複数ソフトを使い分けるメリットは微妙なのだ。一般的には1ソフト内で完結させる。別工程で別ソフトを使うことはごく普通にあるが、1工程内で複数ソフトを使い分けるためには両者の互換性がネックになる。そして多くの場合はその互換性が極めて低い。
Zbrush+Blenderでも例外ではなく、できないことも多い。だが幸いGoBアドオンがあるので、メッシュについてはある程度は自由に往復できる。(もちろんできないこともある、技術的な仕様により)
とはいえ、無いものねだりをしてもしょうがない。結果、GoBアドオンを使ってBlenderとZbrushのいいとこ取りでメッシュを仕上げる、というワークフローに辿り着いた。それも1年ほど前に。だがそこからの発展性がなかった。停滞したのだ。
何とかそのハードルを下げるための工夫により辿り着いたワークフローを作り上げて、力尽きたのが2ヶ月前の話(笑)現在、まとめ記事を執筆中。
Blenderの進化とZbrushの停滞
ここ最近ではBlender+アドオンによるモデリングや造型の可能性の広がりに目を奪われることが多く、相対的にZbrushの停滞感が嫌に感じるようになった。Zbrush 2021.7の進化部分のいくつかは、過去の自分が苦心して作ったプラグインの本家実装版だった。
もちろんZbrushが便利になるのはいいことだが、気分はあまり良くなかった。ま、だからなんだ?と言わればそれは単なる私個人の感想でしかないのだが……。
Zbrushにはもっとデジタル粘土としての基礎的な部分の底上げを期待していた。それに対してローポリやハードサーフェスについてはポリゴンモデリングたるDCCツールやCAD由来のSTLメッシュの方が有利なわけだから、その点で言ってもZbrushは微妙な進化をしている気がする。
特にベベル=フィレット=角丸化についてはトポロジと密接に関わるため、トポロジ無視を得意とするハイポリモデリングのZbrushでは対極にある極めて不利な分野に踏み込もうとしている気がしてならない。もちろんそれを技術的にブレークスルーできたのならばそれはそれで素晴らしいのだが、私がZbrushに期待する機能ではない。トポロジ制御に優れるBlenderでベベルモディファイアを使って可逆制御するだろうな、と思っている。
逆にアイディア出しのために自由に粘土でコネコネ、という感じでスカルプトリスプロ+カーブナイフでぶった切ってたたき台を作るためにZbrushを使うだろう。あるいはそこからリトポしてベースメッシュを作って、必要ならば手動リトポだったりZRemesherでトポロジを整えて、というワークフローに入るだろう。
リトポと言えばもうBlender+RetopoFlowで決まりだ。
Zbrush 2021でもできなくはないが気が遠くなる上に非効率だ。納期と寿命が無限ならば関係ないが、どちらも有限なので効率を追求する価値はある。BlenderのポリゴンモデリングはZbrushの苦手分野をよく補ってくれる。加えてBlenderもRetopoFlowも無料でも使えるのだから、使わない手はない。
Zbrushの基本機能だけをキッチリ使う
最近のZbrushは微に入り細に入り「ごく限られたシーンでのみ活躍する機能」が増えた気がする。正直、使いこなせない(笑)そんなシーンのほうが少なくね?ということが多いと感じるのだ。とはいえツールをどう使うかはユーザーの自由なのでお好みで、と言いたいところだが、個人的には逆に高機能化してきている今だからこそ、基本機能の使いこなしを強調したい。
- デジタル粘土としての「ブラシの直径の範囲内の頂点群を、筆圧制御すること」
- ハイポリで出やすいムラを最短の手間でならすこと
恐らくこの2点がZbrushの使いこなしの重要なポイントになると感じている。実はそれ以外ならば、Blenderのスカルプト機能でも何とかなってしまうのだ。だからこそこの2点に絞ってZbrushのうま味を引き出すことを考えたいと思っている。
ブラシの多さとかは大した問題じゃない。自分がよく使うブラシ数種類について習熟した方が遥かに役に立つ。数じゃなくて、習熟度の深さ、自分の道具としての極め、これのほうが重要。
Zbrushが生成するメッシュは「完璧じゃない」
これは割と重要な視点で、Zbrushオンリーでゼロから作ったメッシュだからと言って必ずしも「エラーのない完全なメッシュ」とは限らないのだ。これはBlenderを触ってみてよく分かった。Blenderにもメッシュチェックの機能やアドオンがたくさんあるが、それらを使ってZbrush由来のメッシュをチェックすると、結構な確率でエラーが見つかる。それを修正してBlenderからZbrushに戻せば、見た目上は何の変化もないが、重複頂点の修正だったり、自己交差の修正だったりと、見た目で分からないデジタルなエラーが修正できることもある。
ZbrushもBlenderもポリゴンモデリングなので相互の頂点の位置関係により、ときには3Dプリントできない矛盾する位置関係も有り得る。
厚さ0の板ポリ、自己交差した水密メッシュなど。いずれも3Dプリントした物質としては表現ができない。専門用語で非多様体(Non Manifold、ノンマニフォールド)メッシュと呼ばれる厄介なメッシュの状態。
Zbrushのいいところもいっぱいある
ではZbrushはスカルプト専用ツールか?と言われるとそうでもなくて、実はプラスアルファの機能も多い。例えばZRemesher、デシメーションマスターなど、ツールとしての機能も一部はとても優秀だ。また柔軟なポリグループの設定、一部の非表示・表示の切り替え、マスクの設定と解除の簡便さ、Alt + ギズモの方向変更など、Blenderでは使いにくいところをあっさり補ってくれる部分もある。
そういう意味では、ZbrushもBlenderも使える身としては、敢えてZbrushを捨ててBlenderオンリーに移るメリットもまた少ない。
とはいえ、Zbrushで使いたい機能に対して「使わない機能」も多いのは明らかだ。布シミュレーションを使っている人はどれくらいいるだろう……。そしてコストの問題もある。半分の機能を使いたいので半額にしてほしい、というのは恐らく多くの新規ユーザーの願いだろう。
既存ユーザーとこれからの新規ユーザーとの間の「温度差」はますます広がっている気がする。少なくとも今のZbrushの進化の方向性は既存ユーザーにメリットはあるが、新規ユーザーにとって魅力的だとは思えない。もう少し新規ユーザーに寄り添ってもいい気がする。
無印ZbrushとZbrush Coreの中間グレードがあってもいい気がする。でもそれをやると商売にならないのかもね。
ま、思う・考えるのは私の自由だ。
【結論】いいとこ取りで使い分ける
なので結論としては、今のZbrushの機能の半分程度しか使うつもりがないし、一般的に見ても高コストだなという印象はぬぐえないし、手放しで新規ユーザーに「Zbrush最高だからオススメよ!」とは言えないというのが本音だ。ソフトウェアに投資できた人にはそれなりにメリットはあることは間違いないが、万人にお勧めか?と言われると迷う。
ただ、使える身としては便利に使いつつ、不便なところはBlenderと切替えて使い分ける事で、何とかうま味を引き出そう、という結論になると思う。とはいえ、ZRemesherやデシメーションマスターなどはそれぞれで単体のソフトウェアに匹敵する機能なので、そういう機能も計算したならば、Zbrushのコストを何とか自分自身に納得させようとすることは可能だが、そういう機能をカットして半額で、というニーズもある気がする。
なのでZbrushには今後、機能とコストと「デジタル粘土としての正統な進化」を期待し、現状でZbrushの使える機能はとことん使って作業を効率化させよう、というところで着地している。
Zbrushプラグイン開発者としてもZbrushを応援したい気持ちもある一方で、自分自身の創作活動への貢献度があまり高くないことが微妙な感じ、というのは相変わらず。
だが、とりあえずは今後1年間はZbrushを使っていこうと決めたので、今まで滞っていた3DCG活動、Zbrushに関する執筆なども復活する予定です、という長々とした日記でした(笑)
今回の創作活動は約1時間30分(累積 約2,570時間)
(758回目のブログ更新)
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